テクニカルエリアの使用および負傷者発生時の対応について
競技規則の「テクニカルエリア」は、テクニカルエリア内からの戦術的指示の行い方ならびにテクニカルエリア内にいることができる監督、チーム役員、交代要員および交代して退いた競技者の態度について規定しています。
また、競技規則にある「審判員への追加的指示およびガイドライン(2008/09年版からは、"競技規則の解釈と審判員のためのガイドライン"へと変更)」には、試合中に競技者が負傷した場合の手続きについて規定しています。

しかしながら、責任ある態度等について具体的な明記がないこともあり、ベンチおよびテクニカルエリア内でのチーム役員、交代要員および交代して退いた競技者の行動について正しく理解されていないと考えられる事象が散見されます。また、競技者が負傷した際の手続きも、上記ガイドラインに沿って行われていないケースも発生しています。

これらは、審判員のみならず、選手、チーム役員が競技規則やその解釈を熟知し、それに従って対応あるいは行動すれば、時間の浪費を抑えられ、また審判員と選手やチーム役員との軋轢も生じることなく、試合がより円滑に進められるものです。

これらの解釈について、下記のとおり改めて考え方を示します。再度確認すると共に各試合において、これらを遵守するようお願いいたします。



1.テクニカルエリアの使用
@テクニカルエリアに入ることのできる者
・大会(リーグ)規定に定められた交代要員数およびチーム役員数の範囲内で、試合前に届けられた者ならびに交代して退いた競技者のみ。

A 戦術的指示
・その都度ただ1人のチーム役員のみが指示を与えられる(ただし、特定された通訳の追加的な同行について、大会(リーグ)で規定することができる)。
・ 指示を与えたのちは、所定の位置に戻る

Bエリア外の活動
・エリアに入る者は、試合中、常にエリアの中にとどまっていなければならない。
・エリアに入る者が、スタンド等で試合を分析した後エリアに入ることは認められない。
・監督やチーム役員は、主審が承認した場合、競技者の負傷対応のためフィールドに入ることができる。
・エリアに入る者は、ウォームアップやクーリングダウンのためウォームアップエリアに入ることができる。
・交代要員は、交代のため、第4の審判員の指示に従ってハーフウェーラインのところで待機することができる。

C態度
・監督およびその他エリアに入る者は、責任ある態度で行動しなければならない。
・監督以外の者は、常にベンチや椅子に着席していなければならない(戦術的指示を与える場合を除く)。
・主審の判定等に異議を唱えることは、認められない。

2.競技者が負傷した場合の手続き
@プレーの停止
・主審は、競技者が重傷を負っていると判断した場合、プレーを停止する。

A担架およびドクター等のフィールド入場
・主審は、治療が必要かどうか負傷した競技者に質問する。
・負傷した競技者が治療を必要と答えた場合や主審の質問に答えられなかった場合、主審は2名以内のドクター等のチーム役員(通訳を含む)の入場を認める。
・担架は、ドクター等と一緒に入場する。
例外(B)を除き、フィールド内での治療は、認められない。
・ドクター等が入場した場合、負傷した競技者は、ゴールキーパーを除き、フィールド外に退出する(退出を拒んだ競技者は、警告される)。
・退出した競技者は、プレーが再開後、主審の承認を得てフィールドに復帰する(ボールがインプレー中は、タッチラインからのみ)。

B例外
・ゴールキーパーが負傷したとき、ゴールキーパーはフィールド内で治療を受けられる。
・ゴールキーパーとフィールドプレーヤーが衝突し即座な対応が必要なときは、両者共にフィールド内で治療を受けられる(ただし、フィールドプレーヤーは、極力早急にフィールド外に退出する)。
・フィールドプレーヤーであっても、重篤な負傷を負った場合、フィールド内で治療を受けられる。

以上

<参考>
テクニカルエリア

第3条国際評議会の決定2に規定されているテクニカルエリアは、特にスタジアムでの試合において用いられるもので、図に示されるよう、チーム役員と交代要員の座席部分が設置されている。

テクニカルエリアの大きさや場所はスタジアムによって異なるが、以下の点を一般的な指針としてここに示す。

● テクニカルエリアは、特定された座席部分から両横に1?(1ヤード)、前方にタッチラインから1?(1ヤード)の範囲である。
● テクニカルエリアを明確にするためにマーキングをすることが勧められる。
● テクニカルエリアに入ることのできる人数は、競技会規定によって規定される。
● テクニカルエリアに入ることのできる者の氏名は、競技会規定に従って試合開始前に特定される。
● その都度ただ1人の役員のみが戦術的指示を伝えることができる。指示を与えたあとは所定の位置に戻るものとする。
● トレーナーや医師が競技者の負傷の程度を判断するため主審からフィールドに入る承認を得た場合などの特別な状況を除いて、監督と役員はつねにテクニカルエリアの中にとどまっているものとする。
● テクニカルエリアに入っている監督およびその他の者は、責任ある態度で行動するものとする。

負傷者
主審は、負傷者に対応するときには次の手続きを遵守する。
● 競技者の負傷が軽いと判断した場合、ボールがアウトオブプレーになるまでプレーを続けさせる。
● 競技者が重傷を負っていると判断した場合、プレーを停止する。
● 負傷した競技者に質問をしたのち、競技者の負傷程度を判断し、競技者の安全を確保して迅速にフィールドから搬出するため、1名または最大2名のドクターのフィールドへの入場を認めることができる。
● 担架搬送者は担架を持ってドクターが入るのと一緒にフィールドに入り、負傷した競技者をできるだけ早く退出させる。
● 主審は、負傷した競技者をフィールドから安全に退出できるようにする。
● 競技者は、フィールド内で治療を受けることができない。
● 負傷により出血している競技者は、フィールドから離れるものとする。主審が、止血を十分に確認するまで、その競技者はフィールドに復帰することができない。競技者は、血液のついた衣服を身に付けることは許されない。
● 主審がドクターのフィールド入場を認めたときは、競技者は担架に乗って、または歩いて、すぐさまフィールドから離れるものとする。競技者が拒んだならば、反スポーツ的行為で警告される。
● 負傷した競技者は、試合が再開されたのち、フィールドに復帰することができる。
● ボールがインプレー中、負傷した競技者はタッチラインからフィールドに復帰するものとする。ボールがアウトオブプレー中であれば、負傷した競技者はいずれの境界線からであっても復帰することができる。
● ボールがインプレー、アウトオブプレーにかかわらず、主審のみが負傷した競技者のフィールド復帰を認めることができる。
● 主審は、副審または第4の審判員によって復帰の準備ができていると確認されたならば、負傷した競技者に復帰の承認を与えることができる。
● その他の理由でプレーが停止されているのではなく、また競技者の負傷が競技規則の違反に起因していないのであれば、主審はプレーをドロップボールにより再開する。
● 主審は、負傷の対応により空費された時間のすべてを前、後半の最後にプレーさせる。
・主審がカードを提示しようとした負傷した競技者が治療のためフィールドを離れなければならなくなった場合、主審はその競技者がフィールドを離れる前にカードを提示する。

この規定の例外は、次の場合にのみ適用される。
・ゴールキーパーが負傷したとき。
・ゴールキーパーとフィールドプレーヤーが衝突し、即座な対応が必要なとき
・重篤な負傷が発生したとき(例えば、舌が気道を塞ぐ、脳や心臓の震盪、足の骨折)